テレビや雑誌で活躍する女優、小松彩夏さんが、
岩手県の北部に位置する二戸市へ!
今回は、秋編。自然に触れ、食を楽しみ、
手仕事に親しんだ二日間。
どんな出会いが待っていたのでしょうか?
お楽しみに!
最初に向かったのは、二戸駅から車で約5分の場所にある、「自助工房 四季の里」。「南部せんべい」の老舗、株式会社小松製菓が運営している食事処です。メニューは県北地方の郷土料理が中心で、特におすすめなのがお蕎麦。「岩手県産のそば粉を使って打ちたて、茹でたてはもちろん、蕎麦の実の選別から、石臼挽きまで、全て同社のスタッフが担当しているんですよ」と副店長の小野美智子さんから聞いて、そのこだわりぶりに驚く小松さん。お蕎麦に天ぷら、煮物、和え物付きの「四季の里セット」を注文しました。「のど越しが良いし、お蕎麦の香りがとっても豊か!」とにっこり。
もう一品、「巖手(いわて)とりから~ゴマせん衣~」もいただくことに。地元の銘柄鶏「あべどり」のもも肉に、ごませんべいをくだいた衣をつけたご当地唐揚げです。「食感がサクサク! ごまの風味って、鶏肉に合うんですね。お土産にも良さそう」と、小松さんも太鼓判の美味しさです。
続いて、北のチョコレート工場&店舗「2door」へ。こちらも小松製菓が運営しており、「四季の里」の隣にあります。小松製菓では南部せんべいに次ぐ看板商品として、落花生せんべいのクラッシュしたものをピュアチョコレートでコーティングした「チョコ南部」を開発。同商品をはじめ、チョコレート商品の製造工程が、ガラス越しに見学できるんです! 作業風景を眺めていて、「あれっ?」と小松さん。スタッフがヘッドフォンをしています。それはある理由からなのですが、ぜひお店で確かめてください! 「2door」では体験コーナーも用意。「せんべいカップ体験」の他、「オリジナルチョコ南部」作りは試食ができるとあって、子どもさんにも大人気。旅の思い出にいかがですか?
北のチョコレート工場
&店舗「2door」(ツードア)
住所:二戸市石切所字荒瀬65-3TEL:0195-22-2222
営業時間:10:00 ~ 18:00
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日)
※HPでご確認ください。
料金:オリジナルせんべいカップ体験 500円(税込)
オリジナルチョコ南部 無料
次に向かったのは、二戸市浄法寺町のシンボル的な山、稲庭岳、その中腹の稲庭高原。「何だか、北海道を思い出しました。こんなに壮大な景色が、岩手にもあるんですね!」と、気持ちよさそうに腕を伸ばす小松さん。
稲庭高原では、この草を利用して、牛の放牧が行われています。牛の中でも目を引くのが、赤茶色をした、いわて短角和牛。和牛全体の1%未満という希少な牛です。この地域では、自然に寄り添った伝統的な飼育が今なお続いています。
稲庭高原からの帰り道、車を停めて立ち寄ったのは、「岩誦坊」の湧き水。山伏たちの修行場で、精霊が宿るとも言われています。水温は、年間を通じ5℃から7℃。手ですくい、「うーん、冷たくて気持ちいい!」と、小松さん。この水を求めて、多くの人が訪れています。
この日の宿は、稲庭高原の麓に位置する「天台の湯」で、まったりと。
ちょっと休憩したら、まずはお風呂へ。お湯は、天然ミネラルをバランスよく含んだ弱アルカリミネラル泉。湯泉には、「岩誦坊」の湧き水を使用しています。大浴場の大きな窓の外に広がるのは、高原の景色。朝には、タイミングが良ければ雲海があらわれることもあるそう。「ジャグジーもあって、あー気持ちよかった!」と小松さん。浴衣に着替えて、さあ、お楽しみの夕食タイム!
この日の料理は、小鉢から汁物、揚げ物、甘味まで13品! ほとんどのメニューに、地元の旬の食材が使われています。メイン料理は、「短角牛肩ロースステーキ~浄法寺産ホワイトアスパラを添えて~」。地元産のワインを傾けながら、至福のひとときを過ごしました。
稲庭交流センター
天台の湯 (てんだいのゆ)
住所:二戸市浄法寺町字野黒沢133-1TEL: 0195-38-3222
営業時間:10:00 ~ 21:00(入浴受付20:00まで)
定休日:第4水曜日
翌日は、「うるしの森」からスタート。現在、日本で使用される漆のほとんどが外国産で、残念ながら国産は3%。わずかな国産の漆の中の貴重な70%が、ここ、二戸地方で生産されているんです!
「ここです」。車が停まった先には、整然と並んだ無数の漆の木。「あの模様は何だろう…?」。漆の木についた、黒い傷を見つめる小松さん。「小さい傷は、6月につけたもの。その後、ちょっとずつ傷をつけて、長くしていって、木の状態を見極めながら、漆を採っていきます」。説明してくれたのは「滴生舎」のスタッフ、後藤佐紀子さん。漆掻き職人が傷をつけると、乳白色の樹液がにじみ出て、それをヘラの先で丁寧に掻き取ります。「一本の木から採取される漆は約200㏄。牛乳瓶一本くらいなんですよ」と聞いて、「そんなに少ないんですか!」と、小松さんはビックリ! 漆は想像以上に貴重なのです。
「うるしの森」を見学した後は、「滴生舎へ」。ここでは、浄法寺漆を使った漆器を製造・販売しています。「漆器には、特別なときに使うものというイメージがありますが、ぜひ普段使いをしてほしいです。浄法寺漆のうつわは、使い込むほどに透明感のある艶が増していって、奥行きが出てきます。時を経るほどに美しく変化していく『経年変化』という美しさを、ぜひ味わってほしいです」と後藤さん。
滴生舎では窓越しに漆塗りの作業を見学することができます。職人の技を前に、後藤さんは言います。「漆にまつわる作業は、地道で華やかではないかもしれませんが、日々、漆の個性に向き合って、考えながら作業しています。とても奥深い世界です」。
うつわをもう一度眺めながら、「世界にひとつしかないですよね。色んな職人さんの手がかかっていて、ありがたみを感じます。育てるうつわですね、ほしくなりました」と、しみじみ。名残惜しそうな小松さんでした。
滴生舎 (てきせいしゃ)
住所:二戸市浄法寺町御山中前田23-6TEL:0195-38-2511
e-mail:
営業時間:8:30~17:00
定休日:火曜日、年末年始
料金:漆ストラップつや出し体験 1,500円(税別)
漆の産地に来たからには、漆にちなんだメニューを。
ランチに選んだのは、「喫茶&お食事 桂泉」。ここには、驚きの「うるしの実コーヒー」があるんです!
「焙煎の加減に苦戦しましたよ…。弱いと白いし、強過ぎると火がついてしまう。完成までに2年近くかかりました」と振り返るのは、オーナーの横浜初二さん。
試行錯誤の末に完成した一杯は、香ばしさの中にほのかな甘みを感じる、やさしい味わい。ホッと一息つくのにピッタリです。
桂泉は料理も充実しており、「カツカレー」や「カツみそラーメン」など、スタミナ満点のメニューが人気。小松さんは、ホワイトアスパラガスを使用した「白い果実のホワイトカレー」を注文しました。浄法寺町では現在、ホワイトアスパラガスを売り出し中。この地域は昼夜の寒暖の差が大きく、アスパラガスが驚くほど甘くなるんです。
「まろやかで食べやすいですし、アスパラガスとの相性も抜群! それに、ノスタルジックな店内も気に入りました(笑)」と小松さん。味にも、雰囲気にも癒されました。
ランチの後は、同じく浄法寺町にある「天台寺」を散策。今から1200年以上前に開山したとされる歴史のある寺院で、瀬戸内寂聴さんが名誉住職を務めていることでも有名ですね。
仁王門と天台寺本堂は、2013年から保存修理に取りかかり、約7年をかけて2020年に「平成の大修理」が完了したばかり。実に360年ぶりに建立当初の姿に復元されました。
天台寺本堂を参拝し、小松さんは「心が洗われました…。空気が澄んでいて、気持ち良かったです」と、清々しい表情をしていました。
楽しい時間はあっという間…。そろそろ帰りの新幹線に乗る時間です。
少しの時間を利用して、お土産を買いに「なにゃーと物産センター」へ。こちらでは、北東北3県の特産品を幅広く取り揃えています。店内をぐるっと見て回り、小松さんは「うるし蜂蜜」、「うるりん棒」、「ぶっとべつくね」の3品を選びました。
次回は、どんな旅になるのかな? 早くも冬の二戸旅に思いを馳せながら、小松さんは大きく手を振り、笑顔で改札を通っていくのでした。(続く)
ミツバチたちが、漆の花の周りを飛び回って集めた、漆の産地ならではの珍しい蜂蜜。上品な甘みと口当たりのよさが特長です。
希少な「うるし蜂蜜」と、二戸産のりんごを使って仕上げた、棒状の焼き菓子。コーヒーにも紅茶にもよく合います。
ニ戸産の「豚(ぶっ)」「鶏肉(と)」「牛肉(べ)」(岩手では牛のことを方言で「べこ」と呼びます。)の肉を使った「つくね串」。3種の肉の良いとこ取りで、噛むたびに肉汁があふれます。