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にのへで暮らそう にのへの「移住」夢中人

「努力は人を変える、に気付いた夢中人」

宮本慶子さん

【にのへ夢中人プロフィール】

お名前:
宮本慶子さん
ご出身
神奈川県横浜市
お仕事
二戸市観光協会観光コーディネーター
夢中コト:
各地の盆踊り、写真・動画・デザイン、着物を普段着にすること、着付けできる人を増やすこと
夢中度合い:
★★★★★MAX

——大学時代はライフセービング部

笑顔がキュートな宮本さん。しかし経歴に2度驚く。
「大学に入る前迄は、自分では泳げる方だと思っていたんですけどね」しかし、体育大学は腕に覚えのある猛者が集まってくる場所。そこで落ちこぼれを経験する。「周回遅れでした」

日体大で、ライフセービングに夢中だったという。芯の強い女性という印象の裏付けはこれだったのか、と経歴に驚くと共に興味が湧く。

——なぜ岩手へ?

お生まれは神奈川県横浜市。「震災後、東北で働きたいと思っていて、新聞で「いわて復興応援隊」の募集広告を見つけたんです」採用者は勤務地を振り分けられ、宮本さんは洋野町役場に配属となったのが6年前のこと。温かく迎え入れていただき、5年の任期満了となったのが去年の今頃。「実家帰っても、、、首都圏で働くのは嫌だなぁと思って。満員電車で通勤する生活は辛いなぁ、岩手に住み続けたいなぁと思っていた時」にタイミングよく二戸市観光協会で募集があったのだそうだ。

首都圏で働くって、イイ響きではないか!若ければ一度は憧れる、なってみたい姿ではないか。「首都圏まで満員電車で1時間、乗り換え、駅から仕事場まで徒歩で30分とか、遅れも考慮すると2時間ですよ。会社着いたらぐったりです」きっと帰りの電車も満員なのだろう。それでは自宅に帰ってもきっとぐったりだ。「洋野に来て、通勤5分が楽で楽で」

宮本さん

——開放されました、自由を得ました

開放されたのは通勤電車からだけではない。女性は「オフィスカジュアル」を求められる。どういうことか。毎日同じスーツ・同じカバン・同じ靴で許されるのは男性で、女性はそうはいかない。ジャケットを変えればそれに合わせてカバンも変えなければならないし、靴だってそうだ。「それはそれで楽しみではあったんですけど」と言いながらも、働きやすい格好で、やること自体により集中できる自由さを感じるようになったのだという。電車通勤がなくなり、買い物も楽になった。

ライフセービング部の頃に、海の近くに住みたいと思っていた。震災後の募集に採用される形になったわけだが、それでも洋野の5年間で大学時代の夢は叶った。

——東北から日本を元気に!「洋野エモーション」の活動

JR八戸線のレストラン列車「TOHOKU EMOTION」を旗を振って歓迎する有志活動「洋野エモーション」を続けている。

舞台となるJR八戸線は青森県八戸市と岩手県久慈市を結ぶローカル線で、「八戸線」と命名されてから100年以上の歴史を持つ。三陸沿岸の鉄道と言えば「あまちゃん」で全国区となった三陸鉄道が有名だが、JR八戸線も大震災での水没や流出による全線不通から復興した鉄道なのだ。

洋野エモーション

短期間のイベントで行うような活動に比べ、運行開始から5年、その間ずっと、ほぼ週4日の運行日は欠かさず活動を続けて来ているのは全国的に見ても珍しいのだそうだ。首都や政令指定都市と地方都市とを何を以て「比べ」るというのか、という議論はさておき、地方の良さをJR社員の方々にも知ってもらう事が重要だと宮本さんは感じた。レストラン列車は観光列車。そこで働くJR社員がこの地域は面白いと感じてくれるようになるには、やはり地域が元気である姿を見せることだと考えている。住民やJR社員が共に地域を面白くしていこうとする姿は、観光客へ気持ちとして伝わると信じている。

この活動は今、JR社員の方々と想いを共有する段階にきているのだそうだ。岩手県北を含む「東北の良さ」をJR東京本社でこれを伝え地方に目を向けてもらうのが次なる目標だ。

——夢中になっているのはナニャトヤラ?

さて、インタビューシート(事前に記入いただく書類のこと)の夢中になっていること欄に真っ先に書いていただいたのがこれだ。

なんだこのスタイリッシュでダイナミックでビートが響く踊りは?と衝撃を受けたのだそうだ。「踊りとかリズム感が全く無い」という宮本さんは、まさか自分が踊れるようになるとは一切思っていなかったのだそうだ。「唄は、ある意味ゴスペルですね。魂を歌ってますね」

ナニャトヤラの歌(歌詞)の起源が諸説あるように、踊り方も太鼓の叩き方も地域のよってまちまちだ。それらの地域にどんな伝承が残されているのかにも興味を引かれるが、宮本さんが言うダイナミックでビートが響くのは二戸や田子(青森県)に伝わる太鼓だろう。生まれ育った環境のいわゆる盆踊りに魅力や凄さを感じたことはないのだという。ところが本人の言葉を借りるとナニャトヤラは「大地からのエネルギーが足から入って手から出ていく踊り」なのだそうだ。無になれる踊りなんだとか。きっと昔の人も同じように大地のエネルギーを感じ夜通し踊っていたのだろう。かつての踊り手に思いを馳せ、思いを感じることができるのがナニャトヤラだと宮本さんは力強く言うのだ。また、ナニャトヤラを次の世代に伝えようとする熱い伝承者に出会えたこともこの踊りの魅力に取りつかれたきっかけだろう。

盆踊りに代表される地元に伝わる踊りは、男女の出会う場として伝わっていることがある。大地のエネルギーを感じる踊りが、昔のように男女の出会いの場にもなるようにと宮本さんの奮闘は続くのだ。

——50インチのテレビを勝ち取る踊り

「もともとストイックな面があって。自分の踊りをビデオに撮って、駄目なところを直しましたね。田子大盆踊り大会の最優秀賞がテレビだったんです」初めての挑戦は3位に終わったが、そこからが夢中人の本領発揮だ。狙ってトップを取りに行くのは相当な努力があったのではないか。大会では幼い頃から踊り続けているナニャトヤラ・エリートがわんさと出場する。だが「出身者でもない私がこうして夢中になれるのだから、きっと誰でも参加できる」と思ったのだそうだ。情熱大陸ものの奮闘である。

ナニャトヤラに夢中

——NNTYで着付け講習

学生時代に気付いたことの中で「努力は人を変える」というのがある。自分はできると思って入部した部活動で挫折を味わった。自分よりできる人だらけの中で、自分がついていくためには「2倍、3倍の努力が必要だった」という。落ち込んでばかりいても始まらないから、とにかく練習量を増やした。そうしたら成長する自分という感覚を掴めた。はじめは全然ダメでも、どこがダメなのかを見つけて直せばいい。スポーツを通じて身につけたことをその後の人生にも役立ててきた。ダメかどうかで止まるのではなく「自分が何をしたいか(何になりたいか)」のための努力を惜しまない。「衝撃を受けた踊りを自分も踊れるようになりたい」と思った。きっかけは単純でも、そこに向かっていくのが夢中人だ。

「踊りを突き詰めていったら、着物(浴衣)も着られるようになりたいと思ったんです」着物は誰かに着付けをお願いしなければならないというイメージが強い。そのため着物を着るのは順番待ちとなる。着付けを待つということは、踊りのための集合時間が早くなる。自分で着られるようになる人が増えれば、着物も踊りももっと身近になってくれると感じた。自分で着るということは自分の体型に合わせた着方ができるようになる。着物はキツイというイメージも払拭でき、1日着物姿でいられるようになるのだという。保存会を越えた有志が集まるグループ「NNTY(ナニャトヤラの略)」で着付けの講習を行い手応えを感じ始めている。

——二戸ってどんなとこ?

「開放感がありますね。あと新幹線が停まるので便利ですよね」都会に比べてごみごみしておらず、適度な便利さがある町。そこに住む人はというと、自ら「控えめ」と言っているわりにそんなことはなくむしろエネルギッシュな人が多いと感じている。謙遜しながらも、内に秘めるパワーを持っているのが二戸の人の特徴なのかもしれない。

——これからの目標は

若い頃は自分を通すために他人とぶつかることがあった。しかしそれは誰にとっても疲れるだけだと気付いたのだそうだ。今は、好きなことにのめり込める環境があって、エネルギッシュな方達に恵まれて、そんな二戸で暮らしていきたいと思っている宮本さん。穏やかに周りの人と調和して生きていくことが人生の目標だ。宮本さんが新たな夢中人を生み出すきっかけを秘めた移住夢中人であることは間違いなさそうだ。

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